森田ドクターは本書で「パブロフの犬」とか「加速装置」という例をあげて意識を「集中モード」に切り替える話をされていますが、実際問題、そんな簡単に意識を切り替えることって可能なんでしょうか?
はい。たしかに一見そんなことってできるの?と思われるかも知れません。でも実際には可能なのです。
 まずネガティブな方向に意識が一瞬で変わる例を考えてみましょう。たとえば人ごみの中を歩いているとき、誰かがあなたにぶつかったとします。そして、何も謝らずに通り過ぎて行ったとき、あなたは一瞬にして「ムッとした」ことはありませんか。
 この時、あなたの意識を一瞬で変化させたのはあなたですか?それともぶつかった相手ですか?実は答えはあなた自身なのです。なぜなら、「誰かがぶつかった」という事実だけでは、人の意識は変わりません。実際、誰かにぶつかられても何も気にしない人もたくさんいますね。なのに、あたながむっとしたということは、「誰かがぶつかった」という事実に対してあなたがあなたの意識を「ムカつきモード」に変えたからなのです。このように人間の意識の状態というのは、一瞬にして変化するのです。
 では、いい方に変化させる例も考えてみましょう。これを科学的にやる方法に「バイオフィードバック」というものがあります。これはどういうものかというと、人間の脳波や心拍数や体温などの生体情報をもとに、自分の状態をいい方向に「意識的に」変化させるものです。
 たとえば、パソコンの画面に魚が映っていて、脳波の状態が変化すると魚の泳いでいる位置が上下するといったものがあります。自分の意識をうまく変化させられるようになると、魚が上に行ったり、下に行ったり、自在に操れるようになります。この魚の動きは脳波と連動しているので、単に魚をコントロールできたのではなく、自分の脳波、ひいては自分の意識をコントロールできたということになります。
 このような方法を使ってスポーツ選手のメンタルトレーニングをしたり、特殊な病気で注意力の欠けている子どもの訓練をしたりといったことが、実際に行われています。これらの例からお分かりのように、人間の意識というのは、いい方向にも悪い方向にも一瞬で変化させることが可能なのです。