編集者コラム

2016.06.22

「頭がいい人」ってどんな人?

「頭がいい人」「理解能力の高い人」というと、おそらく多くの人が医者や
 弁護士といった職業を思い浮かべると思います。
 あるいはプログラマーやエンジニア、トレーダーといった専門職もなんだか
 頭がよさそうです。

 いずれも「専門的な知識」がなくては務まらない仕事であり、素人の私たち
 の知らないテクニカルタームがばんばん飛び交う世界です。

 ただ、この10年ほどの間に脳科学の分野で「理解する」ということの本質が
 解き明かされてきた中で、「理解能力」は、知識の量とはあまり関係ないと
 いうことがわかってきました。

 研究によると、新しく見聞きした情報を脳が「理解する」というのは、その
 情報を「すでにわかっていること」とつなげることらしいのです。

 つまり、深く理解するとは、新しい情報が、頭の中にあるたくさんの記憶と
 つながっているということであり、逆に、浅い理解というのは、すでにある
 記憶とのつながりがあまりないということ。
 もちろん、多くの知識をすでに持っているということは、単純に考えると、
 それだけ新しい知識とつながる確率は高くなります。

 だから、持っている知識量とまったく関係なくはないのですが、重要なのは
 「知識の量」ではなく、「知識の間のつながりの多さ」ということです。
 たとえ多くの専門知識を持っていたとしても、それらのつながりが浅ければ
 理解は浅くなり、理解にもとづく「思考」も浅くなります。

 そして、浅い思考しか使わない仕事は、専門知識が必要でも、コンピュータ
 の発達でどんどん自動化されていきます。

 ある人工知能の研究者の話では、「画像診断医や刑事事件の弁護人などは、
 専門知識が必要でも、精度の点では、すでに人間よりコンピュータのほうが
 上回りつつある。この先、コンピュータに置き換わっていくのではないか。
 一方で、総合診療医や離婚弁護士といった仕事は、なくならないだろう」と
 予測しています。

 これは、単に専門知識を適用するだけではなく、人間の思考や感情について
 深い理解、高度な思考が必要な仕事は自動化されにくいということです。

 先日発売の新刊『深く、速く、考える。』の著者・稲垣公夫氏は、海外での
 トヨタ研究の総本山の一つであるミシガン大学で、トヨタ研究の大家である
 ジェフリー・ライカー教授に師事し、自身もリーン製品開発(トヨタ式製品
 開発をベースにした開発方式)やトヨタの人材育成のやり方、A3用紙1枚
 に企画や提案をまとめる「A3報告書」などの思考ツールにも精通、世界的
 ベストセラーとなったライカー教授の『ザ・トヨタウェイ』の日本語版翻訳
 なども手がけています。

 昨期は過去最高の2兆3100億円の利益を上げたトヨタで、多くの天才的
 エンジニアを見てきた稲垣氏は、「頭がいいというのは、具体と抽象を自由
 に行き来できること」と話しています。

 複雑な現象を具体レベルで見たら、次は俯瞰して抽象レベルから見るという
 ように、思考の抽象度を自在に上げ下げできる人は、ものごとの本質を理解
 しやすいというのです。

 同氏が主に製造業のエンジニア向けに実施している、思考の抽象度を自由に
 上げ下げする能力を鍛えるプログラム「本質思考道場」と、そこで訓練する
 深く速い思考=「深速思考」。
 それらのメソッドをまとめたのがこの『深く、速く、考える。』です。

 「AKB48はなぜ成功できたか?」「鳥貴族はなぜ儲かっているのか?」
 といった身近なネタを例題に取り上げつつ、思考力を鍛える一冊です。

【深く、速く、考える。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/484437480X/cmpubliscojp-22/