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本書の「はじめに」では、10年前と比べ、生涯で得られる給料の平均が2000万円減っているというお話をしました。そして、今後はより減っていく可能性もあるといいました。
ここでは、「どうやってそれを求めたのか」、「なぜ減るのか」についてより少し詳しく説明していこうと思います。

少し古いですが、私が使ったのは2007年の国税庁のデータです。データによると、2007年時点での日本人男性の所得平均は、次のとおり。

20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 40代前半 40代後半 50代前半 50代後半
271万円 381万円 463万円 560万円 634万円 662万円 667万円 638万円


この世代別年収にそれぞれに5年をかけることで、ざっくりと生涯年収をはじきだします。

(271万円+381万円+463万円+560万円+634万円+662万円+667万円+638万円)×各5年=2億1380万円

となり、生涯の給与所得が平均して2億1300万円程度であることがわかります。
しかし、給料だけが収入ではありません。そう、なにかと話題になる年金です。
自営業の方、サラリーマンの方で年金の種類が違い、また納付年数でも違いがでるため一概にはいえませんが、専業主婦の家庭を想定して平均すると、自営業の方で月13万円程度、サラリーマンの方で月23万円程度受給しているようです。平均すると18万円といったところでしょうか?

年金の受給開始は65歳、65歳男性の平均余命は18年のため、年金の受取額は、18万円×12か月×18年=3888万円

となり、生涯の年金受給はおおよそ3800万円となります。
これらをあわせると、生涯収入はおおよそ2億5千万円と想定されます。

2億5千万円、これだけあれば何とかなりそうな気がしますが、ここに大きな落とし穴があります。これはあくまで現在の20代から50代の人の年収を想定した場合。みなさんが20代や30代の場合、今の50代と同じ所得が得られるとは限らない、いや、確実に得られないのです。

その理由として大きなものを次の2つの視点から考えてみましょう。

さきほども国税庁のデータから各世代の所得を確認しましたが、実はこれを時系列でみると恐るべき傾向が確認できます。
すべての世代において、10年前と比べて所得は低下しているのです。

  20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 40代前半 40代後半 50代前半 50代後半
1997年 307万円 413万円 513万円 589万円 645万円 695万円 702万円 737万円
2007年 271万円 381万円 463万円 560万円 634万円 662万円 667万円 638万円
減少額 ▲ 36万円 ▲ 32万円 ▲ 50万円 ▲ 29万円 ▲ 11万円 ▲ 33万円 ▲ 35万円 ▲ 35万円


たった10年でこれだけ減少しています。1997年といえばもうバブルも崩壊し、超がつく就職氷河期だった時代です。つまり、この年収の減少は単なる景気の後退を原因とするものではなく、社会構造として日本人の所得は減少傾向に入っていると考えられます。

このように所得が減っている理由のひとつとしてあげられるのが経済のグローバル化です。
今はほとんどの企業がもっとも低コストでつくれる国を血まなこになって探している時代、熟練工じゃなくてもできる単純作業は、どんどん海外へシフトします。企業経営者は海外で、それこそ乾いた雑巾をさらに絞るほどの、強烈なコスト削減競争にさらされているため、日本人の給料水準が高いと判断すると、すぐにでも海外に工場を移転します。

「パートタイマーか無職かどちらがいいか」
これはオリックスの宮内社長の物議を醸した発言ですが、確実に日本はこの状態になりつつあります。宮内社長は別に差別主義者でも何でもありません。徹底したリアリストなのです。

そしてもうひとつ、我々の生涯収入が少なくなる理由が少子高齢化による年金の受給額の減少です。
この原稿を書いているときに、興味深い記事がありました。

国の年金がこのままだと2020年に破たん、すなわちお金が尽きてしまうらしいのです。
国庫負担、つまり年金の足りない分を税金で補っているのですが、現在の比率は3分の1。それを2分の1に引き上げないと破たんするとの記事でした。
この国庫負担にしてもそれは税金……消費税や所得税、法人税を通して我々の給与カットと、結局私たちの負担が増えることには変わりありません。

年金が破たんするにしても、税金が上がるにしても、我々のお金が減ることには変わりはないようです。
そして、この少子高齢化は日本という国全体ではなく、みなさんが勤めている会社にも暗い影を落としています。

昔の日本の会社は、ほんどが終身雇用・年功序列で、一度企業に就職すればよほどの不祥事を起こさないかぎり定年まで昇進し続け、給料も上がり続けました。こうして給料が上がりきった年齢の高い社員が、みなさんの勤めている会社にはたくさんいます。
しかし、バブル崩壊後企業業績は悪化し、企業はみな、設備投資・在庫・人員の過剰に苦しんでいます。特にバブル期にこの好景気が無限に続くと錯覚した企業は大量の人員を、選別することもなく雇い入れてしまいました。
そして、その人員を減らす調整弁として使われているのが非正規雇用という雇用形態です。そしてその非正規雇用の労働者の大部分を占めるのが20代〜30代なのです。

テレビや新聞、雑誌の報道では「派遣切り」とセンセーショナルに報道され、大企業のエゴのようにいわれ、社長を中心として経営者が叩かれています。しかし結局のところ、「派遣切り」の問題は「社長VS非正規雇用」なのではなく「すでに給料の上がりきった中高年正社員VS若い非正規雇用」という従業員同士のパイの奪い合いなのです。

 
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